2023年現在、歴代の牝馬三冠馬は6頭です。
牝馬三冠とは、桜花賞、オークス、秋華賞の3つのレースを制した馬のことですが、この記事では歴代の牝馬三冠馬の特徴や、惜しくも牝馬三冠を逃した牝馬などを紹介します。
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Contents
競馬で牝馬三冠とは
牝馬三冠とは、桜花賞、オークス、秋華賞の3つのレースを制した馬に与えられる称号です。
元々、クラシック三冠と呼ばれる皐月賞、ダービー、菊花賞の3つのレースを制した馬を三冠馬と呼ばれますが、これらのレースは3歳馬のみが出走できるレースです。
3歳限定という一生に一度のチャンスの中で、世代で最も賞金の高いレース3つを制覇した三冠馬は、現在8頭いますが、いずれも歴代の名馬と呼ばれる馬達です。
そして、牡馬ではなく、牝馬限定の3歳戦で最も賞金が高い、桜花賞、オークス、秋華賞の3つを制覇した馬に与えられるのが牝馬三冠となります。
元々、牝馬三冠の対象となるレースは存在していませんでしたが、1970年にヴィクトリアカップが創設されたことで、現在の3歳牝馬クラシック路線が確立されます。
牝馬三冠の歴史
クラシックレースは本場イギリスのクラシック競走を模範として創設されたレースで、5つのレースは日本でも戦前に存在しています。
日本のクラシックレースと英国でのレース名は以下の通りです。
国内クラシック競走 | 英国クラシック競走 | 国内創設年度 |
---|---|---|
桜花賞 | 1000ギニー(One Thousand Guineas Stakes) | 1939年 |
皐月賞 | 2000ギニー(Two Thousand Guineas Stakes) | 1939年 |
優駿牝馬(オークス) | オークス(The Oaks Stakes) | 1938年 |
東京優駿(日本ダービー) | ダービー(Derby Stakes) | 1932年 |
秋華賞 | 該当なし | 1970年(ヴィクトリアC) |
菊花賞 | セントレジャー(St. Leger Stakes) | 1938年 |
本場イギリスでも三冠馬はTriple Crown、牝馬三冠馬はthe fillies' Triple Crownと表現されます。
現在でもイギリスの牝馬3冠では、3戦目は日本の菊花賞に当たるセントレジャーが対象となっており、イギリスでは純粋な牝馬三冠路線は確立されていません。
それに対し、日本では1970年に牝馬クラシック路線の確立を目的として、牝馬三冠の最終戦の位置づけでヴィクトリアカップが創設されます。
ヴィクトリアカップは、その後エリザベス女王杯、秋華賞とレース名や条件が変更となり現在に至りますが、本場英国に先駆けて牝馬路線を確立し、その後、国内で多くの牝馬三冠馬が誕生することになります。
牝馬三冠馬6頭を詳しく解説
2023年5月現在、歴代の牝馬三冠馬6頭は以下の通りです。
馬名 | 馬主 | |
---|---|---|
1986年 | メジロラモーヌ | 有限会社メジロ牧場 |
2003年 | スティルインラブ | ノースヒルズマネジメント |
2010年 | アパパネ | 金子真人 |
2012年 | ジェンティルドンナ | サンデーレーシング |
2018年 | アーモンドアイ | シルクレーシング |
2020年 | デアリングタクト | ノルマンディーサラブレッドレーシング |
では、それぞれ個別に特徴を見ていきましょう。
史上初の牝馬三冠馬メジロラモーヌ
牝馬クラシック路線が整備されて以降、初の牝馬三冠の快挙を達成したのが、1986年の牝馬三冠馬メジロラモーヌです。
初の牝馬三冠達成というだけでも凄い実績ですが、同馬の特徴は3歳(当時4歳)時のクラシック3冠制覇だけでなく、トライアルレースも全て勝っており、トライアル三冠も達成している点です。
年明け初戦のクイーンSこそ4着に敗れるものの、以降、後に「牝馬の河内」と呼ばれた河内洋騎手がこの馬に騎乗し、4歳牝馬特別(現フィリーズレビュー)、桜花賞、4歳牝馬特別(現フローラS)、オークス、ローズS、エリザベス女王杯まで6連勝を達成します。
当時は勝ち馬でも桜花賞の後にトライアルを挟むのが一般的なローテーションであり、現在は、桜花賞で優先出走権を獲得した馬は、オークスへの直行が主流のため、この快挙を達成したのはメジロラモーヌ1頭のみ、今後も破られる可能性が低い偉大な記録です。
史上2頭目の牝馬三冠馬スティルインラブ
メジロラモーヌの達成以降、牝馬三冠馬は長い間いませんでしたが、17年後の2003年にスティルインラブが史上2頭目の牝馬三冠を達成します。
デビュー当時から幸英明騎手が騎乗し、自身桜花賞で初GⅠ制覇を達成、その後も引退まで同騎手が主戦を務めます。
この馬の特徴は、三冠レース本番では1番人気ではなく常に2番手評価だった点です。
これは同期にエアグルーヴ産駒のアドマイヤグルーヴがいたためであり、本番ではアドマイヤグルーヴの2番手評価という形です。
不利のあったチューリップ賞で2着、本番では好走が期待されましたが、良血のアドマイヤグルーヴに人気が集まった桜花賞、桜花賞を勝ったものの、母子3代に渡るオークス制覇に人気が集まったオークスでもアドマイヤグルーヴに次ぐ人気、そして秋にローズSで5着に敗れたため、2番人気に甘んじた秋華賞。
このように牝馬三冠全てで2番人気に支持されながらも、レースで結果を残し見事に牝馬三冠を達成しているのがスティルインラブの特徴です。
牝馬GⅠグランドスラムまであと一歩だったアパパネ
史上3頭目となる牝馬三冠馬は2010年のアパパネです。
馬主の金子真人氏はディープインパクトのオーナーとしても有名ですが、アパパネの牝馬三冠達成により、牡馬、牝馬両方の三冠馬のオーナーという個人馬主としては異例の快挙を達成します。
アパパネの大きな特徴は、現存する牝馬GⅠ6つのうち5つを勝利している点です。
牝馬3冠だけでなく、2歳時には阪神ジュベナイルフィリーズ、古馬ではヴィクトリアマイルを勝つなど、古馬牝馬限定GⅠであるエリザベス女王杯を除く全ての牝馬GⅠを制覇しており、この記録は2023年の時点ではアパパネのみが持つ記録です。
他にも主戦の蛯名騎手は関東騎手だったため、関東騎手による唯一の牝馬三冠達成、オークスによる史上初のGⅠ同着での勝利、重賞以上の勝利は全てGⅠレースといったように、アパパネは数多くの記録を達成します。
また、引退後もアカイトリノムスメが秋華賞を勝利するなど産駒の成績も優秀で、繁殖牝馬として今後の活躍に注目です。
近年の最強牝馬の先駆けジェンティルドンナ
これまでの牝馬三冠馬3頭は、古馬になってからの牡馬との対決では結果を出せていませんでしたが、2012年に牝馬三冠を達成したジェンティルドンナ以降は、文字通り最強と呼べる三冠牝馬達です。
ジェンティルドンナは牝馬三冠達成後、3歳でジャパンカップを勝利し、同レース3歳牝馬の史上初の勝利に加え、牝馬三冠馬として牡牝混合のGⅠレースでの初勝利という記録を達成し、同年の年度代表馬に選出されます。
4歳になっても実力は衰えず、ドバイシーマクラシック2着、宝塚記念3着、天皇賞秋2着と安定した成績を残し、続くジャパンカップで見事勝利し同レース連覇を達成、ジャパンカップ連覇は牝馬ながらも、同馬が初めて達成した快挙となります。
5歳時になると初戦の京都記念では自身初の掲示板外となる6着に敗れますが、続くドバイシーマクラシックを制覇し、史上2頭目となる同レースの制覇を達成。
その後の宝塚記念は9着に敗退したことで、さすがに衰えが見え始めたのか、5歳でジャパンカップを最後に引退を陣営は決意しますが、天皇賞秋は2着、さらには最大の目標である3連覇がかかるジャパンカップでは4着に敗れます。
元々ジャパンカップでの引退を発表していた陣営でしたが、同レースが不完全燃焼だったことを理由に、暮れの有馬記念を最後に引退することを発表し、迎えた有馬記念を見事勝利、同年2度目となる年度代表馬に選出され、最高の形で同馬はターフを去ります。
また引退後、2016年にはJRAの競馬の殿堂である顕彰馬に選出され、歴史を代表する名馬の仲間入りを果たします。
2018年には産駒のジェラルディーナがエリザベス女王杯を制覇し、繁殖牝馬としてもGⅠ勝ちの快挙を達成、2023年現在、繁殖牝馬として現役のため、今後も子供たちの活躍が期待されます。
歴代最強馬アーモンドアイ
2018年に牝馬三冠を達成したアーモンドアイは、競馬ファンの間では歴代最強馬の1頭に挙げられる程の実績を持つ名馬です。
ジェンティルドンナと同じく牝馬三冠達成後は牡馬相手のGⅠで活躍し、3歳でジャパンカップ制覇を達成。
4歳時には海外GⅠドバイターフ、天皇賞秋の2つのGⅠで勝利。
さらに、5歳時になってもヴィクトリアマイルを勝ち、天皇賞秋でも無事連覇を達成。
最後のレースとなったジャパンカップでは、ジェンティルドンナに続く史上2頭目となるジャパンカップ2勝を達成します。
同じ牝馬三冠馬であるジェンティルドンナと比較しても、ジャパンカップ2勝、2度の年度代表馬選出といった共通点も多いですが、天皇賞秋連覇、そして2023年現在で、史上最多記録となるGⅠ勝利数9勝、歴代獲得賞金トップといった点が、歴代最強牝馬として挙げられる理由です。
無事に成長すれば2024年には産駒がデビューとなるため、今後は繁殖牝馬としての活躍に多くの競馬ファンの期待が集まります。
史上初となる無敗で牝馬三冠を達成したデアリングタクト
最後に紹介する6頭目は2020年に牝馬三冠を達成したデアリングタクトです。
この年のクラシックは牡馬ではコントレイルが三冠を達成し、牝馬ではデアリングタクトが三冠を達成するという異例の年となりましたが、両馬共に無敗で三冠を達成します
特に牡馬では無敗の三冠馬はコントレイルで史上3頭目ですが、牝馬三冠を無敗で達成したのは同馬が初めてです。
三冠達成後のコントレイルやアーモンドアイとの直接対決となったジャパンカップでは、アーモンドアイの3着に敗れたものの、古馬のトップクラスでも十分に通用する力を発揮しています。
2023年現在、6歳で現役続行となったデアリングタクトですが、今後の活躍が楽しみな牝馬三冠馬です。
歴代最強牝馬クリフジ
これまでは、牝馬三冠馬を紹介してきましたが、古くから競馬ファンの間で歴代最強牝馬と言われているのが、1943年に牝馬でダービーを制覇したクリフジです。
クリフジが最強と呼ばれる理由は、牝馬でダービーを制覇しただけでなく、その後、当時は秋に開催されていたオークス(阪神優駿牝馬)を10馬身差で圧勝、そして続く菊花賞(京都農林省賞典四歳呼馬)も勝利している点です。
特に菊花賞では現在でも破られていない史上唯一となる10馬身以上の大差勝ちを果たしており、また現在唯一となる変則三冠を達成した馬であり、通算成績も11戦11勝というパーフェクトの実績を残しています。
繁殖入り後も3頭の重賞クラスの勝ち馬を輩出するなど繁殖成績は優秀であり、これらの偉大な成績が評価され、1984年に顕彰馬制度発足段階で選ばれた歴史的名馬10頭の1頭として選ばれるなど、古い競馬ファンの間では伝説的とも言える強さを誇った最強の三冠牝馬です。
惜しくも牝馬三冠を逃したテスコガビーとダイワスカーレット
残念ながら三冠を達成できず、2冠に終わった牝馬はヴィクトリアカップ創設後の1970年以降19頭います。
その中でもテスコガビー、ダイワスカーレットの2頭は3冠が濃厚ながらも、アクシデントにより牝馬三冠を逃した牝馬です。
テスコガビーは1975年に桜花賞を史上唯一の大差勝ちし、オークスでも8馬身差の圧勝で二冠制覇を達成するも、故障が原因でヴィクトリアカップ出走を逃すことになります。
1975年という比較的近代に大差勝ちを果たしたことから、クリフジと並んで古い競馬ファンの間では最強牝馬に挙がる1頭です。
また、ウマ娘でもお馴染みのダイワスカーレットは、桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯を3歳時に勝ったものの、クラシックは二冠に終わります。
特にオークスでは当初出走を予定したものの熱発のため急遽回避することになり、当時はウオッカがダービー出走を表明し、オークス勝利に最も近い位置にいただけに、不運とも呼べる結末です。
ただ、ダイワスカーレットはクラシックよりも、むしろ古馬になってからの成績も優秀で、37年ぶりとなる牝馬による有馬記念制覇、ライバルであるウオッカとの5度目の対戦でハナ差2着に敗れた天皇賞秋など、最近の競馬ファンの記憶に残る最強の牝馬です。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は歴代の牝馬三冠馬6頭と、惜しくも三冠を逃した2頭の簡単な特徴をまとめてみました。
2023年にはリバティアイランドが桜花賞、オークスを圧勝し、牝馬三冠の期待が高まっていますが、同馬は2歳GⅠ阪神JFも制覇しているため、アパパネが惜しくも逃した牝馬GⅠグランドスラムの達成も期待されています。
今年のリバティアイランドの活躍にはぜひとも注目したいですね。