競馬のレースを予想するためにはさまざまなデータを確認する必要があります。
「過去の実績」「血統」「脚質」「騎手」「競馬場の特徴」など見るべきデータはたくさんありますが、多くの人が気になる情報のひとつが「馬体重」です。
とはいえ、馬体重に関する考え方は人それぞれで「多少の増減は気にならない」という人もいれば「馬体重が減っている馬は買わない」といった考えの人もいるでしょう。
本記事では馬体重について基礎知識や馬体重が増減する要因、馬体重を予想に活用するにはどうすれば良いかを解説していきます。
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Contents
馬体重の基礎知識について
馬体重とはその名称通り、競走馬の体重を示す数値です。
ここでは馬体重の基礎知識について、馬体重の発表時期、平均体重・最高体重・最低体重などを紹介していきます。
このうち、馬体重の発表時期については馬券の予想をするのに知っておいたほうが良い知識なので覚えておきましょう。
最終的な馬体重はいつ発表されるの?
馬体重の発表時期についてですが、大きく「調教後の馬体重」と「レース直前の最終馬体重の発表」の2度、馬体重の発表時期があります。
調教後の馬体重はG1レースと中山金杯(GⅢ)・京都金杯(GⅢ)に出走する競走馬に対しておこないます。
調教が終わった後にトレーニングセンターに設置されている体重計を使って競走馬の体重を計測、その数値をJRAに申告し、そののちにJRAがさまざまなメディアにその数値を伝えることによって私たちは調教後の馬体重を知ることができるというわけです。
調教後の体重は各レース直前の水曜日ないし木曜日の調教後に計測した体重を木曜日の17時ごろに発表するといった流れになっています。
調教後の馬体重をどれくらいにするかは調教師や厩舎によって異なりますが、特に長距離輸送をする競走馬の場合は輸送することで体重が減るので、それを想定してレース前体重よりも重めに仕上げる場合が多いです。
レース前の馬体重計測は、調教後の場体重計測とは比べ物にならないほど厳しい管理下のもとで行われます。
まず、トレーニングセンターから競馬場に競走馬が輸送されると、発走1時間前まで「装鞍所」という場所で待機します。
装鞍所では、まず到着した競走馬が実際にレースに出走する競走馬かどうかの確認が行われ、間違いがなければ蹄鉄を検査したり、競走馬の体調面のチェックがおこなわれます。
これらの検査が終了したのち、改めて馬体重を計測、ここでの数値がレースの出走表に記載される「出走前の最終的な馬体重」として発表されるというわけです。
平均体重・最高体重・最低体重
競走馬は2023年現在、ほぼ全てがサラブレッドとなっていますが、サラブレッドの平均体重は牡馬では約470キロ、牝馬では牡馬よりも少し軽い460キロとなっています。
一般的な乗馬用の馬の体重は500キロといわれていますが、競走馬はレースを走るために徹底艇に無駄な肉を削ぎ落しているので、一般的な競走馬よりもかなり軽くなっているというわけです。
これまでJRAに登録された競走馬でもっとも馬体重が重かったのは「ショーグン」という競走馬で、ピーク時の体重はなんと640キロと、平均馬体重よりも170キロも重い体重でした。
ちなみに最高体重での勝利記録をもっているのもショーグンで、626キロの時に勝利しています。
一方で過去最低体重の競走馬は「グランローズ」で体重は330キロ、ショーグンのほぼ半分の体重しかありませんでした。
グランローズはデビューから4戦しましたが、いずれも先頭から大きく離される大敗を喫し、活躍はできませんでした。
G1勝利馬で最高体重だったのはヒシアケボノで560キロ、最低体重は390キロで阪神3歳ステークスで勝利したスエヒロジョウオーです。
馬体重が増減する要素とは?
競走馬は生き物なので、生きている過程で成長はしますし、食事も取らなければなりません。
競走馬の場体重が増減するのは正に生物であるからこそなのですが、馬体重が増減する要素というのは大きく分けると「成長」「体調」「調教」「輸送」と4つの条件によって大きく変化します。
それぞれの要素で馬体重はどのように変わるのかを知っておくと、馬体重をチェックした際に正確な判断ができるようになるでしょう。
成長
競走馬が実際にレースに出走してコースを走る年齢というのは2歳半ばから6歳にかけてですが、引退する年齢はその競走馬の価値によって大きく変わり、早く子孫を残したいと思うような優れた能力の競走馬は早ければ4歳を終えると同時に引退しますし、引退させても種牡馬や繁殖牝馬としての価値はほとんどないと判断された競走馬は、シビアな話をすれば全く上位に入れないまでもレースに出走して手当をもらったほうが少しは稼いでくれるので、7歳になっても8歳になってもレースに出走している場合もあります。
競走馬の年齢を人間の年齢に換算すると、2歳中ごろというのは小学校高学年くらい、3歳は中学生から高校生くらいです。
つまり競走馬がデビューして間もないころというのは成長期の真っただ中にあるということになります。
成長期の真っただ中にあるということは、たくさん食べてたくさん成長するということになるので、体重もどんどん増えます。
したがって、成長期にある競走馬の場体重の増加というのは通常とは違う捉え方をしなければなりません。
特にG1レースを戦ってきたような優秀な競走馬たちが夏の放牧を経て秋の重賞レースに出走した場合、前走よりも体重が20キロ近く増えていることもありますが、この増加は「成長分」と考えておいたほうがよいかもしれません。
もちろんパドックなどで馬体を観察する必要はありますが、太っているように見えなければ成長時期の馬体重増加はあまり気にしないほうが良いでしょう。
一方で成長時期であるにも関わらず馬体重が減っている場合は要注意です。
この時期の馬体重減少は少しの減少であっても大きなマイナス要素であると受け止めておいたほうがよいでしょう。
体調
競走馬は私たち人間と同じように日々によって体調が変化します。
風邪を引いたり胃腸の調子があまり良くないという状態もあるでしょう。
体調が本調子ではない場合は食欲もあまりないため体重の増加は見込めず、場合によっては10キロ近く体調が減ってしまうケースがあります。
競走馬の体調というのは私たちがパドックを見ても判断できないので、事前の調教の情報や直前の馬体重の増減などで判断するしかありません。
調教
調教は人間でいえば試合前のトレーニングです。
このトレーニングがハードかそうでないかによっても馬体重の増減は大きく変わります。
ハードなトレーニングというのは、ボクサーの試合前を想像してもらうと分かりやすいでしょうか。
坂道やダートなど負荷がかかる馬場で走り込みをしていれば体重は減少するでしょうし、何らかの理由で軽めのトレーニングしかできないのであれば体重はどんどん増えていくことでしょう。
調教後の体重と、前走の体重を比較するというのは、その競走馬の調子や調教具合を確認する有効なデータのひとつといえます。
輸送
競馬場は日本各地に存在していて、競走馬たちは時に出走する競馬場に向けて輸送させられることになります。
輸送中は狭い場所に長時間居続けなければならないため、競走馬にとっては多大なストレスを受け続けることとなります。
そのため輸送中競走馬は大量の汗をかいてしまい、輸送前と輸送後では体重が10キロ以上減ってしまう競走馬もいるほどです。
もちろん厩舎で働いている人たちはそのような競走馬の性格を把握しているので、あらかじめ減少する体重分を考慮して輸送前の体重を調整します。
とはいえ、輸送時にどれだけストレスを感じるかは競走馬によって大きく違います。
現在現役の競走馬で輸送をものともしない性格として最も有名なのが2022年の日本ダービーを制したドウデュースで、とあるレースで輸送が必要となった際、輸送分も考慮していつもより多めに食事をさせたのですが、輸送時にまったく体重が減らなかったため結局前走からプラス12キロとなってしまい、厩舎スタッフが青ざめてしまったというエピソードがあります。
馬体重は基本的に平均より重い馬のほうが好走しやすい
私たち人間のスポーツでは、身体が大きい選手のほうが活躍しやすいです。
例えば現在日本人スポーツ選手でもっとも知名度が高いのは大谷翔平選手ですが、大谷翔平選手の身長は193センチ、体重は95キロと、日本人野球選手の平均身長や平均体重と比較すればかなり大柄といえるでしょう。
日本人NBA選手として大活躍している八村塁選手も身長は206センチと恵まれた体格をしており、この体格のおかげでNBAの超一流選手と激しいプレーをしても決して当たり負けせずに自分のプレーを続けることができているのです。
競馬においてはどうかというと、競馬においても体格が平均よりも大きい馬、つまり馬体重が平均よりも重い馬のほうが活躍しやすい傾向にあります。
400キロ前半の競走馬の勝率や連対率は著しく悪い一方で、先ほど解説した平均値以上の馬体重の競走馬は勝率・連対率ともに大きく上昇します。
これは馬体重が重くなれば単純に筋肉量が増えてパワーもスピードも増しますし、馬体そのものも大きくなるので一歩の歩幅が大きく、少ない歩幅でゴールに到達できるので結果的にスタミナを残した状態で最終直線に挑みやすくなるからです。
特に実際にどの馬も初めてレースに臨む新馬戦の場合、どの馬を購入するか迷った場合は馬体重の重い競走馬を購入するという買い方をすると案外良い結果をもたらしてくれたりします。
馬体重は予想の際にどのようにチェックすれば良い?
ここからは実際にレースの予想をする際に馬体重をどのように有効活用していけばよいかを解説します。
馬体重については冒頭にも書いた通り、「気にしたほうが良い」という人と「全く気にしなくても構わない」という人がいますが、結論から言えばケースバイケースなので、状況によって重要視すべきかどうかは大きく変わります。
馬体重は「出走表」で確認
まず、基本中の基本である馬体重をどこで確認すればよいかについてですが、馬体重は「出走表」の「馬体重」の欄を見ればすぐに確認できます。
ただし、馬体重は出走表が出されてすぐに確認できるものではありません。
馬体重の計測方法でも解説したとおり、レース前の馬体重は「装鞍所」という場所で出走1時間前くらいに計測するため、それまでは発表されません。
馬体重が知りたい場合はそのレースが始まる1時間前くらいに出走表をチェックするようにしましょう。
「前走」ではなく「ベスト馬体重」からの増減で確認する
馬体重の増減で買い目に含めるかどうかを決める際に頭に入れておいてほしいのが、「馬体重増減による判断は前走ではなく、その馬のベスト体重からの増減で判断する」という点です。
例えば前走が明らかにベスト体重から減っている状況で、そこから今回のレースでプラス15キロ増加していたとしても、前走の減り具合を考慮すれば、今回はベスト体重で望めているかもしれません。
ベスト体重でレースに臨めるのであれば、前走よりも良い走りが期待できるでしょう。
ベスト馬体重からマイナス20キロ以上は要注意
ベスト馬体重から10キロ以内の増減は結論から言えばさほど気にする必要はありません。
競走馬は排泄によって数キロ体重が減るのは当たり前です。
馬体重を重要視する人は10キロの増減で「この馬はこのレースでは走らないな」「この馬は太目残りだから駄目だろう」と買い目から外す人がいるのですが、10キロ増えた競走馬や10キロ減った競走馬でも前走と全く変わらないパフォーマンスを見せてくれることは多々あります。
ただし、20キロ以上増減している場合は流石に走りにかなり影響してくるので、評価を下げたほうがよいでしょう。
特にベスト体重から20キロ以上体重が減っている場合は明らかに調子が悪いので、前走どれだけ好成績を残していたとしても、馬券からは外しておいたほうがよいでしょう。
10キロ増と10キロ減では捉え方が全然違う
10キロ増と10キロ減ではパフォーマンスはあまり変わらないと解説しましたが、増えているよりも減っている方が評価はシビアになります。
体重が増えているというのは調教で絞れなかったことが原因であり、身体の調子は良好である事は間違いありません。
逆に体重が減っているという事は、調教が厳しすぎる、あまり食事を摂らない、輸送時にストレスで体重を減らしたなど、基本的にマイナス要素が原因である事が多く、競走馬も本調子ではない可能性が高いです。
同じような能力で、片方が体重10キロ増でもう片方が10キロ減となっているのであれば、基本的に10キロ増の競走馬を選んだ方が良いでしょう。
3歳馬の体重が増えないのは要注意!
3歳馬は人間でいえば中学生から高校生くらいの年齢ということもあり、もっとも成長する時期です。
身体がどんどん大きくなるので、この時期は体重が増えているのが普通であり、間隔が空いて久々のレースであれば10キロ以上体重が増えていても見た目が太いと感じなければ特に問題はありません。
むしろ3歳馬の長期休養明けで体重がほとんど増えていないというのは通常の現状維持とは意味合いが大きく変わってくるので、あまり調子が上向いていないと判断したほうが良いかもしれません。
体重の増減は元々の馬体重によっても捉え方が変わる
体重の増減についてはついつい増えた数値や減った数値だけを気にしてしまいがちですが、それだけではなく元々の体重を考慮して増減については判断しなければなりません。
例えば馬体重400キロの競走馬の10キロ増と馬体重500キロの競走馬の10キロ増では同じ10キロ増でもその捉え方は大きく変わってきます。
最終的に馬体重の増減については、その競走馬の元々のベスト体重を元にして、そこからどれくらい増減しているかでその競走馬の調子や走りに影響があるのかを判断していくのがただしい馬体重との向き合い方だといえるのではないでしょうか。
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まとめ
馬体重とはその名の通り競走馬の体重のことです。
馬体重は基本的にレース1時間前に計測され、その数値が出走表に発表されますが、G1レースをはじめとした一部レースでは水曜日または木曜日の午前中の調教が終了したのちの馬体重も公表されます。
馬体重は、以下4つの要素によって増減します。
馬体重が増減する要因
- 成長
- 調教
- 体調
- 輸送
基本的に増えているよりも減っている時のほうがシビアに評価したほうが良いですが、2桁に満たない増減であればそこまで気にする必要はありません。
- 20キロ以上の増減
- 10キロ以上減少
- 成長期にある2歳後半から3歳時の長期休養明けで体重がまったく増えていない
以上3つの要素のどれかに当てはまった場合はレースに何らかの影響が生じると考えておいたほうが良いですが、これらの要素を考慮するときは必ず「ベスト体重と比較してどれくらい増減しているか」で比較するようにしましょう。
そして同じ増減でもその競走馬の元々の馬体重によっても捉え方が変わってきます。
馬体重に関しては「予想に活用したほうがよい」という人と「競走馬の走りにはほとんど影響しないから予想に活用しないほうがいい」という人と真っ二つに分かれますが、簡単に活用する、しないで決められるようなものではありません。
どういった要因で、どのくらい増減しているかをチェックしたうえでその都度活用すべきかどうかを判断する数値だといえるでしょう。