競艇に興味を持ったのであれば、動画でもよいので一度はレースを観てほしいのですが、その前に身につけておかなければならないのが、スタートに関する知識です。
競艇は一般的なレース競技とは異なるスタート形式になっているので、理解してないといつレースが始まったのかが分からなくなってしまいます。
本記事では競艇のスタート位置をはじめ、スタートについて詳しく解説していくので、しっかり理解してレース観戦を楽しんでください。
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目次
競艇は「位置についてヨーイドン」ができない競技
通常、コースを周回して着順を競う競技ではスタートラインに全選手が待機し、スタートの合図と共に一斉に走りはじめます。
ところが競艇は水上で行われる競技なので、地上のように定位置で止まる事自体が困難であるため、「位置についてヨーイドン」という形でスタートができないのです。
「フライングスタート方式」を採用
(引用元:youtube)
そこで競艇では「フライングスタート方式」というスタート方式を採用しています。
何故フライングスタートという名前になったのかについてですが、競艇のスタートでは実はレースがスタートする前にボートを走らせ始めるため、何も知らない人から見るとまるでフライングをしているように見えるからです。
ちなみにフライングスタート方式はヨット等競艇と同じように水上で行われるいくつかの競技で採用されているスタート方式です。
スタート位置を決める「待機行動」の具体的な流れ
競艇が100m走など通常のトラック競技とは異なるスタート方式を採用していることは理解してもらえたと思います。
本項目では実際にどのような流れでスタートするのかを簡単に解説していきます。
補足として説明しておくと、実は競艇では出走表のコース通りにスタートしなければならないという決まりはありません。
したがってスタートする前からある意味選手同士の駆け引きは始まっているのです。
ピットアウト
まず、レースに出走する選手はピットと呼ばれている待機場所でレーススタートの合図があるまで待機しています。
そしてレース開始を告げるファンファーレが鳴った瞬間ピットから飛び出してスタート位置へと向かいます。
ピットからスタートに向かう一連の動作をピットアウトというのですが、このピットアウトの時点で既にポジション争いは始まっており、上手くピットアウトできた選手は有利なコースを選びやすくなります。
ブイと第2ターンマークを周回しながらスタート位置を取り合う
ピットアウトした選手は小回り防止ブイというブイをまずは通り、そこから第2ターンマークを目指します。
小回り防止ブイとは
競艇のコースの第2ターンマークから20mの位置にある水面上に浮かんでいる球体のことを指し、別名「オレンジブイ」とも呼びます。
この部分はスタートするコースを決める重要な部分であるため、レース観戦に慣れてくると選手同士の駆け引きが見られて面白いです。
艇の先がスタートラインに向いたら確定
第2ターンマークを周回し、艇の先がスタートラインに向いた瞬間、その艇のコースが確定します。
これ以降はコースを変更する事はできず、もし変更すると反則となります。
スタート前の待機位置で改めて合図を待ち、スタートの合図とともに一斉にスタートライン目掛けて加速します。
ただし、ただ加速すれば良いというわけではなく、スタートラインを過ぎた瞬間にレースのタイムがカウント開始するタイミングでなければなりません。
早すぎても遅すぎても反則となってしまいます。
あまりにも早く1コースを取るとスタートで大きく不利に
競艇は1コースが圧倒的に有利な競技です。
ボートやモーターの性能差はあるにしても競走馬や競輪選手のような絶対的な違いというものではありません。
したがって最もインコースを走行できる1コースのアドバンテージは絶大なものがあります。
ならば選手全員が真っ先に1コース目指して飛び出しそうなものなのですが、あまりにも他の選手よりも早く先に行きすぎると大きく不利になってしまうのです。
先行して1コースを奪取したとしても、ほかの選手の準備ができるまで待機しなければなりません。
すると待機している間にボートはどんどんスタートライン側へと流されてしまい、加速が不十分なままスタートラインにかなり接近した状態でスタートしなければならなくなります。
これでは十分加速できず、スタートで大きく遅れをとってしまうでしょう。
スタート位置はインコース3艇とアウトコース3艇ではっきり分かれる
(引用元:YOUTUBE)
スタートする位置については待機位置の範囲内であれば自由なのですが、ほとんどのレースでインコース3艇とアウトコース3艇ではスタート位置が大きく分かれます。
インコース3艇は早めに待機位置に向かい、アウトコースの艇を待つ事になるので必然的にスタートラインに近い位置からのスタートになります。
逆にアウトコース3艇はスタートラインからかなり離れた位置からスタートし、トップスピードでスタートラインを超える事を目指して加速します。
「イン屋」と「アウト屋」について
(引用元:YOUTUBE)
競艇には「イン屋」と「アウト屋」と呼ばれる選手がいて、スタートの際に他の選手とは大きく異なる動きをします。
「アウト屋」とは?
まずアウト屋の選手ですが、アウト屋の選手はアウトコース、基本的には6コースからのスタートを積極的に狙ってきます。
6コースは普通の選手であれば極力スタートしたくない場所なので、アウト屋の選手はほぼ間違いなく自分の思い通りのコースからスタートできます。
アウト屋の選手は極限まで伸びるモーターに調整し、チルト(エンジンを取り付ける角度)も限界まで角度をつけ、水面と接する面積を減らして水の抵抗を少なくします。
スタート直後ボートは一気に加速して真っ先に第1ターンマークに到達、一気にまくりを決めて先頭に立つ、というのがアウト屋の勝ちパターンです。
大外からインの艇を豪快にまくるアウト屋の走りは見た目にも派手で会場は大いに盛り上がります。
しかしそうそう上手くいくものではないですし、昔は「持ちペラ制度」といって選手が自由に整備したプロペラを使えたため、プロペラもアウト屋仕様にできたのですが、今は不可能なのでアウト屋は非常に苦しい戦いを強いられています。
アウト屋を諦めた選手も数多く、2023年現在アウト屋として戦い続けているのは阿波勝哉選手ただ1人です。
「イン屋」とは?
続いてイン屋ですが、イン屋は待機行動を大いに掻き回す存在です。
イン屋はアウト屋の逆でインコースからのスタートにとことんこだわったレースをします。
したがってアウトコースの場合はそのまま進入するといった事はほとんどありません。
半ば強引に先行して周回し、インコースからのスタートを狙います。
あまりに早く先行するとスタートラインにどんどん近づいて助走距離が短くなるのですが、イン屋選手はそんな事はお構いなしですし、スタートラインに近くても巧みにスタートを決める技術を持っています。
現在は枠なり進入になることがほとんど
しかし、アウト屋選手と同様にイン屋選手も年々減少傾向に有ります。
というより新たなイン屋選手が誕生していません。
イン屋選手は3,000番台前半より古い番号にしか存在せず、この番号の選手は近いうちに引退を控えている選手たちばかりなので、あと数年もすればアウト屋選手もイン屋選手も居なくなることでしょう。
2023年現在においても、レースの大部分が出走表通りのコースとなる枠なり進入が大部分を占めていますが、将来は更にその比率が上昇し、展示航走で積極的にインコースやアウトコースを狙うような動きをしていた選手がいた事自体記憶から忘れ去られてしまうのかもしれません。
待機行動違反について
競艇は公平で健全かつ安全なレースを実施するため、さまざまなルールが設けられていて、そのルールに違反した場合、選手は罰を受ける事になります。
待機行動中もいくつかのルールがあって、そのルールを破ると待機行動違反となり、罰則を与えられてしまいます。
待機行動違反に関しては、違反しているかどうかは会場の審判員に委ねられるので、観ている側もどこで違反したのかが分かりづらいです。
ひとつひとつ説明してもイメージしにくいので、やってはいけない事を箇条書きでまとめます。
待機行動違反となる行為
- 待機行動中に3回以上大きくハンドルを切る行為
- ハンドルを右方向に切る行為
- 直進せず外側に流れて助走距離を稼ぐ行為
- わざとエンストさせる行為
- 水面上の設備に接触する行為
- 150mすぎた艇の内側に入る割り込み行為
- 追突、急減速などで他の艇を妨害する行為
基本的には危険と思われる動きや相手選手を妨害する行為に対して違反と判断するケースが多いようです。
待機行動違反の罰則ですが、1回目は事故点7点、2回目は賞典除外、そして3回違反すると即日帰郷となります。
また、違反を犯す事に事故点2点が加算され、この点数は級別審査の際に適用され、事故点があまりにも多すぎる場合は降級したり、最悪の場合、引退勧告を受けることもあります。
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まとめ
競艇は水上で行われるため、リレーなどのようにスタートラインに選手が全員揃った状態で一斉にスタートするといったスタート方式をとることができません。
そのため、競艇ではフライングスタートという方式を採用しています。
まずピットでスタートの合図があるまで待機、ファンファーレと同時にピット離れをして小回り防止ブイを目指します。
その後第2ターンマークを周り、待機位置にて待機、合図とともにスタートラインを通過した瞬間にレースタイムのカウントがスタートするようにタイミングを合わせながら加速してスタートするといった流れです。
待機行動の際に特殊な動きをする「イン屋」「アウト屋」と呼ばれる選手が出走している場合は注意が必要で、アウト屋の選手は6コースを目指して、イン屋選手はインコースを目指して動きます。
特にイン屋の選手は待機行動を掻き乱す存在であり、一部のファンからは嫌われています。
しかしイン屋選手もアウト屋選手も年々少なくなっていて、現在は枠なり進入が大半である事を考慮すると、将来は全レースが枠なり進入となる可能性が非常に高いです。
待機行動にもいくつかのルールがあり、違反した場合は待機行動違反として罰則を受ける事になります。