2020年に発生したいわゆる「コロナ禍」ではイベントや施設の利用について様々な制限がかけられていました。
競輪界においても2020年前半は「無観客試合」という状況であり、デイレースでもまったくお客さんが居ない中でレースが行われたりとこれまで見たことがないような状況で運営が行われていました。
そんな中で実施されていたのが「5車立てレース」です。
本記事ではコロナ禍に実施されていた5車立てレースについて、どのようなレースだったかを解説し、3着までを当てれば的中となるワイド車券はどのように取り扱われていたのかも解説します。
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Contents
5車立てレースとは?
5車立てレースとは5人の選手によって行われる競輪レースのことを指します。
通常、競輪のレースは7車立てまたは9車立ての2つのパターンで行われますが、2019年中旬から2021年後半までの「無観客試合」期間中には、一部のレースで5車立ての試合が実施されていました。
5車立てレースが実施された理由
これまで競輪では7車立てと9車立てという2種類のレースしか実施されていませんでした。
そんな中で5車立てのレースを実施することとなったのには以下のような理由があります。
コロナ患者発生時の対処によって大量の欠席者が出る為
コロナウィルスは当時、感染症法上の位置づけが「2類相当」という扱いでした。
2類相当となっているウィルスに感染した場合、感染者は定められた期間自宅から出てはいけません。
更に感染した日以降に接触した人たちもこれ以上感染者を広げないために自宅待機しなければならなくなります。
競輪選手は練習時に同じ支部の選手と合同で練習する機会が多いため、1人の選手が感染すると同じ支部の選手も複数名レースへの出走停止になるケースが続出しました。
通常、人員が足りない場合は他の部署などから補充人員を急遽斡旋するのですが、万が一急遽斡旋した選手がコロナウィルスに感染していた場合、そこから一気に広がって最悪競輪選手全員がコロナウィルスに感染してしまう恐れがあるため、補充人員を斡旋するといった措置はこの時期取れませんでした。
レースの中止が相次げば競輪の運営そのものが危うくなるため
人員が足りなければ通常はレースそのものを中止するのですが、新型コロナウィルスが蔓延している時にそういった措置を取っているとどれだけのレースを中止しなければならないのか想像もつきません。
レースを中止するということは競輪を運営する側にとっては収入が一切無くなるも同然です。
収入がゼロになってしまう日が沢山出てくれば、競輪の運営そのものが危なくなってしまうでしょう。
そこで、「新型コロナウイルス感染拡大のリスク回避のため、2月17日を初日とする開催から3月末までの競輪開催については、『追加・流用・補充のあっせんを行わない』『不足する選手は欠車とし、状況により繰上げ充当を行わない措置やレースカットも併せ実施する』」といった規定を急遽取り決めることとしました。
つまり、感染者が発生してレースの人員が足りないという事態になっても選手の補充は行わず、基本的にはそのままレースを続行するという措置をすると決めたのです。
5車立てという異例のレースが実施されたのはこのような背景があったからでした。
レース中止が相次ぐと選手の評価が公平にできなくなってしまうため
もうひとつレース不足によって懸念されるのが競輪選手の期別成績の評価です。
競輪選手はレースの着順によって「競走得点」を獲得し、この得点によって昇級・維持・降級が決定します。
ところが人員不足によってレース中止が相次ぐと選手の評価がまともに出来なくなってしまいます。
そもそも競輪のルールでは一定数のレースに出走していなければ降級扱いになると定められているため、自分は完全もしておらず接触者でないにも関わらず、レース中止に巻き込まれて規定出走数に達しておらず降級となってしまっては不満が爆発してしまうでしょう。
選手からの不平不満が出ないようにするためにも、運営側としては何としてもレースを開催しなければならず、その結果5車立てレースが実施されることとなったのです。
5車でレースを実施するなどこれまではあり得なかった
競輪のレースにおいて、これまでは5名でレースを実施するといったことはあり得ませんでした。
7車立てで1名欠席となり、6名でレースを実施することはあったものの、2名かけて5名となるような状況ではレースをそのまま強行するといったことはせず、レース停止という処置をとっていたのです。
したがって5名でもレースを実施していたというのは特例中の特例的な措置を取っていたといえます。
ワイドの当たりはどうなっていた?
ワイドは1着から3着までに入る2名の選手を当てる車券です。
5車立てだと5着までの中で3着以内を当てればよいというルールになり、非常に予想難易度が下がってしまいますが5車立てのレースではワイドは成立するのでしょうか?
結論から言えば、5車立てでもルールに変更はなかったのでワイド車券は成立しています。
先ほど解説した通り5名で3位以内の2名を当てるという車券なので的中率は非常に高くなっています。
更に5車立てレースは性質上、堅い決着になる可能性が高いため、的中しても利益はほとんど得られなかった可能性が高いです。
5車立てレースは否定的な意見が多かった
5車立ての車券を実際に購入していたファンからの評判はどうだったのかというと、一般的には批判的な意見が多かったのが現状です。
否定的だった競輪ファンからの5車立てに対しての指摘で特に多かったのが、「競り合いがほとんど発生しない」「大半がライン決着になってしまって盛り上がりに欠ける」といったものでした。
それぞれの意見については次の項目でさらに乗り下げていくことにしましょう。
競り合いがほぼ発生しない
まず、5車立てレースでは競り合いが発生することがほとんどありません。
5車立てレースの場合、ラインは3対2の2分戦になることが大半です。
すると前のラインはそのまま進めば3着以内が確定しますし、後ろのラインも前を行く選手は4番手なので、最終周回で3着以内を十分狙えます。
すると道中無理をして前に行ったところでそれほどメリットはないですし、むしろ無駄にスタミナを消費するだけなので、レース終盤まで隊列が動くことはほとんどないでしょう。
大半がライン決着になる
前のラインも後ろのラインも体力を温存したまま最終局面までレースを進めることができるので、結局別ラインの選手が前のラインに割り込んで車券圏内に入るといった展開にはなりづらく、前のポジションをキープしたラインを構成している選手たちで決着することになります。
しかも3対2のライン対決ではほとんど3名ラインが先行することになるので、3名ラインの選手全員の買い目を買っておけばほぼ当たるというレース結果になることが大半です。
5車立てレースの特徴
5車立ての特徴について簡単に解説していくと、競輪の醍醐味であるライン争いや駆け引きがほとんど起こらないためレース展開が予測しやすいという特徴があります。
競輪初心者にとっては当てやすく楽しいレースかもしれませんが、ある程度慣れ親しんだ競輪ファンからは正直あまり面白みを感じないという意見が多かったです。
特に競輪に詳しいファンからは、「5車立てのレースの車券は買わない」と宣言する人も存在しました。
レースの予想がしやすいという事は、当然平均配当も7車立てや9車立てと比べると低くなるので、大きな利益を見込むことが難しいという意見もありました。
競輪ファンにとって爆発力のある3連単でも、平均配当が数千円程度となることから、一部の競輪ファンが5車立ての車券を買わないと宣言するのも仕方ないといわざるを得ません。
今後2度と実施されないとは限らない
2023年3月、コロナウイルスに関する制限が大幅に緩和され、マスクの着用義務は基本的になくなり、ほぼコロナ前の日常生活を取り戻しました。
更に2023年5月のゴールデンウィーク以降はこれまで2類相当だったコロナウィルスの扱いが5類相当となり、インフルエンザなどと同等の扱いとなったため、1人の人がコロナに感染してもその人と接触した人が自宅待機をしなければならないといった状況ではなくなりました。
したがって今後はコロナウィルスの再流行が起きても5車立てレースを実施しなければならない状況になることはないでしょう。
しかし、これは単にコロナウイルスが脅威ではなくなっただけであり、他の新しいウイルス性の感染症が蔓延する可能性は依然として存在します。
特に日本は今後もインバウンド需要に頼らざるを得ず、海外からの出入りは増えるでしょう。
したがって、5車立てレースが永遠に実施されないとは言い切れないのです。
この点を考慮すると、5車立てレースの特性については頭の片隅に置いておくべきかもしれません。
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まとめ
5車立てレースとは競輪において5名の選手により争われたレースのことです。
これまで5車立てのレースなどは、競輪の歴史において考えられなかったのですが、2020年から2021年初めにかけて実際に5車立てのレースが実施されていました。
5車立てレースを実施していた理由は以下の通りです。
5車立てレースを実施していた理由
- この時期は新型悪露なウィルスが蔓延している時期で、感染者が発生すると接触者ももれなく欠席となり、大量の欠場者が発生したため
- 人員不足でレースを停止していると競輪場の運営そのものが危うくなるため
- レースの停止が相次ぐと選手の成績の評価が難しくなるため
これらの理由から運営側も半ばやむを得ず5車立てレースを実施していたと考えられます。
しかし5車立てレースはレース中の競り合いが発生せず、ほぼライン決着となってしまうということもあって順当なレースになる可能性が高いうえに配当も非常に低いことから多くの競輪ファンは否定的な意見を持っており、中には5車立てレースの車券は買わないと宣言したファンも居るほどでした。
2023年現在はコロナウィルスによって5車立てレースが発生する可能性はほぼゼロになりましたが、新たに凶悪な感染症が蔓延した場合は再び5車立てレースが実施される可能性があるので、5車立ての特徴については頭の片隅に残しておいたほうが良いかもしれません。