競輪といえば、丸太のような太い足の男性選手たちが競い合う場面を思い浮かべてしまいがちですが、競輪では女性選手も2023年時点で170名以上在籍しており、男性選手に負けない熱戦を繰り広げています。
本記事では、女子競輪における事故について、詳しく解説していきます。
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Contents
ガールズケイリンは大人気!
(引用元:ガールズケイリン公式サイト)
実は昭和期には競輪の女性版にあたる「女子競輪」が存在していましたが、様々な問題を抱えていたため僅か15年で廃止となりました。
しかし競輪の更なる発展を目指して2012年より現在の「ガールズケイリン」として復活し、現在に至ります。
運営側の目論見は大成功し、現在ガールズケイリンだけで500億円以上の売り上げを記録しています。
現在の競輪を語る上でガールズケイリンを欠かす事はできません。
競輪は危険な競技かについて考えてみる
競輪という競技が危険か安全かと問われれば、間違いなく「危険な競技」と言えるでしょう。
競輪だけではなく、競馬、競艇、オートレースと、4つの公営競技はそれぞれ異なる危険を有する競技です。
競輪が危険な競技であるとされる要因はこれから解説する4つに集約されます。
レース中のポジション争い
競輪ではいかに自分が走りやすいポジションを確保できるかが勝敗に大きく影響します。
序盤は先頭誘導員を追い抜くことができないので、一定のペースで比較的ゆっくり走りますが、先頭誘導員がコースから外れて鐘がなると一変、各選手が一気にスピードを挙げて少しでも他の選手よりも前に、そして良いポジションを確保しようとします。
時には触れるか触れないかのギリギリの位置でポジション争いが繰り広げられることもあるのです。
競輪のポジション争いは観ていて非常に興奮しますが、同時に接触して転倒するのではないかとハラハラもします。
そして実際に隣同士で争っている選手たちが接触してしまい、転倒して落車してしまうといった事故が発生してしまうこともあります。
自転車の構造
(引用元:KEIRIN GUIDE)
競輪のレースで使用する自転車は私たちが日常的に乗っている自転車とはまったく構造が異なるものです。
競輪用の自転車のタイヤは幅が2センチ程度と普通の自転車と比べて非常に細くなっています。
これは設置面積を少なくしてスピードを出すためなのですが、設置面積が少ないということは自転車が不安定になりやすいことにも繋がります。
少しでも横風に煽られてしまうと自転車はふらつき、転倒の危険が一気に高まるでしょう。
更に極限までスピードを出すことに特化している競輪用の自転車にはブレーキがありません。
自転車を漕いでいて危険を察知したら、真っ先にブレーキを効かせてスピードを落とし、停止しようとするでしょう。
しかし競輪の自転車ではそういったことはできません。
特に目の前でほかの選手が落車してしまうとスピードが出ている状態で突然目の前に転倒した自転車が迫ってくることになるにも関わらずブレーキを使えないので非常に危険です。
スピード
競輪という競技が棄権だと思われる理由で真っ先に出てくるのはやはり「スピード」でしょう。
競輪では女子競輪でも時速70キロ近く、男性の競輪だと最高時速は80キロ近くにもなります。
つまり公道をほぼトップスピードで走っている自動車と同等以上のスピードを自転車で出しているというわけです。
このような速度をタイヤの幅が2センチでブレーキがない自転車に乗り、時には隣の選手と触れるか触れないかという位置で出すわけですから、競輪選手がいかに危険と隣り合わせの状態で日々のレースに挑んでいるかが分かります。
天候が悪くてもレースを実施
そしてもうひとつ、競輪は基本的に屋外で行われるスポーツなので、天候の影響を大きく受ける競技となっています。
常に晴れていれば良いですが、天気は毎日変化します。
時には雨が降ることもありますし、強い風がコースに吹き付けてくることもあるでしょう。
雨が降ればコースが濡れて滑りやすくなります。
通常の自転車と比べて非常に細い競輪用の自転車に乗っていて滑りやすい雨の路面を走行することがいかに危険であるかは容易に想像がつくでしょう。
また、強風が吹けば特にコーナーをトップスピードで曲がる際に風に煽られて転倒するという危険性が増します。
悪天候で中止になれば良いのですが、台風が上陸しているときやゲリラ豪雨、落雷が頻繁に発生しているなど、かなり酷い状況にならなければレースが中止になる事はありません。
2023年2月時点でガールズケイリンの死亡事故は発生している?
これまで競輪の危険性について紹介してきましたが、危険性についてはガールズケイリンであっても全く変わりありません。
競輪では落車事故による怪我は毎月のように発生していますし、悲しい事ですが過去にはレース中の落車転倒によって亡くなってしまった競輪選手も数名存在します。
では、ガールズケイリンでは過去死亡事故は発生したことがあるのでしょうか。
結論から言うと、2023年2月時点でガールズケイリンにおける死亡事故は発生していません。
ガールズ競輪ではラインが禁止となっていることが死亡事故の防止に繋がっている可能性あり
ガールズケイリンにおいて、現時点で死亡事故が発生していない理由として真っ先に挙げられるのが「ラインを禁止していること」です。
男性選手の競輪では「ライン」と呼ばれる数名の隊列を組んでレース終盤まで争うというのは競輪ファンならば常識中の常識です。
そして最終周回になるとライン戦から個人戦へと一気に変貌します。
これが競輪最大の魅力なのですが、ライン争いが終わって個人戦になった瞬間、前から後ろから選手が一気に接近して密集状態になります。
一方ガールズケイリンでは最初から最後までラインを組むことはなく個人戦となるので、各選手がそれぞれ自分の好きな位置で走行することになります。
したがってライン争いが発生する男性選手の競輪よりも選手同士が一気に密集することがないため、危険な事故が発生しにくいのです。
そしてもうひとつ、ガールズケイリンは全レースが「7車立て」で開催されます。
同じコースで1度に9名走るよりも7名だけのほうが密度は低くなるため、事故が発生しにくいのは当然といえるでしょう。
しかし落車による大怪我は発生している!その事例を紹介
ガールズケイリンでこれまで死亡事故が発生していない理由については理解してもらえたでしょうか。
しかしあくまでもたまたま死亡事故が発生していないというだけで、競輪は危険な競技であることに変わりありません。
ガールズケイリンでは実際にあわや死亡事故になってしまうのではと思われるほど大きな怪我が発生するような事故がいくつか発生しています。
本項目では5名の女子競輪選手の落車事故について簡単ではありますが紹介していきます。
永塚祐子選手
(引用元:けいりんマルシェ)
永塚選手は元不動産会社勤務のキャリアウーマンという異色の経歴を持つ競輪選手です。
しかし競輪学校時代にはゴールデンキャップを獲得するなど高い能力を発揮、プロデビューしてからも完全優勝を成し遂げるなど人気選手の仲間入りを果たしました。
しかし2021年2月27日、小倉競輪場での決勝レースにおいて落車をして転倒してしまいます。
すぐに病院に搬送されましたが、審査の結果腰椎圧迫骨折という重傷を負い、長期休養を余儀なくされてしまいました。
その後復帰しましたが、腰椎骨折の後遺症によって腹筋に力が入らず、思うような走りができない時期もあったようです。
石井貴子選手
(引用元:けいりんマルシェ)
石井選手はスキー選手として活躍していましたが怪我により引退、その後OLとして会社勤めの日々を送っていましたが、自分には合わないと悩んでいたところ、たまたま電車の吊り広告でガールズケイリン選手募集の張り紙を見つけ、競輪選手への道へと歩みだしました。
その後学生自体に早くもトラックレースの選手に抜擢されるなど早くから注目され、デビュー後もデビュー戦で初勝利、さらには初優勝を果たすなど、期待に違わぬ活躍をしています。
しかし2021年5月6日、京王閣競輪場での開催された「ガールズコレクション」で他の選手と接触してしまったことにより落車して転倒、右の鎖骨と肋骨を骨折してしまったうえ肺気胸まで発症してしまいました。
その後必死のリハビリによってレースに復帰、復帰3場所目で勝利を飾り、現在も変わらない活躍を見せています。
加瀬加奈子選手
(引用元:けいりんマルシェ)
加瀬選手はもともとトライアスロン経験者であり、自転車を漕ぐことを得意としていました。
2012年にガールズケイリンが復活することを知ると大学卒業後競輪選手を目指して競輪学校に入学して卒業、デビュー戦では2位に6車差をつけるという圧勝劇で鮮烈なデビューを飾ります。
その後もガールズケイリン創世記を支えるスター選手として活躍、現在も第一線級の強さを維持し続けています。
そんな加瀬選手ですが、2015年12月16日、四日市競輪場のレースにおいて前の選手の落車に巻き込まれてしまい転倒、頭部を強く打ち付けてしまいます。
加瀬選手は転倒直後記憶を失ってしまい、次に気が付いた時は病院のベッドの上だったそうです。
診断の結果は脳挫傷で、打ち所が悪ければ文字通り命を失ってしまいかねない危険な事故でした。
出口倫子選手
(引用元:ガールズ競輪公式サイト)
高校入学時に自転車競技を始めた出口選手は2019年にデビューしました。
デビューして長らく優勝はおろか初勝利も挙げていませんでしたが、2022年には2勝を挙げており、これからの活躍に期待したい選手のひとりです。
そんな出口選手が事故に遭ってしまったのは2021年1月3日、広島競輪場でのレースでした。
レース中に転倒してしまった出口選手は肩から落車してしまい、その際に左肩を骨折したうえ脱臼するという大怪我を負ってしまいました。
その後1か月のリハビリを経て復帰しましたが、翌年2022年5月にも前方の選手が出口選手の自転車に接触した影響で転倒してしまいます。
幸いこの転倒事故は大事には至りませんでしたが、この事例を見ると競輪というのは常に転倒という危険と隣り合わせのスポーツであると思い知らされます。
吉川美穂選手
(引用元:けいりんマルシェ)
吉川選手は2021年にデビューしたばかりの新人選手ですが、これからの活躍が非常に期待されている選手の一人です。
そんな吉川選手ですが2021年10月16日、大宮競輪場で開催されたレースで前の選手の落車に巻き込まれてしまい吉川選手自身も転倒して背骨を骨折、さらに脳挫傷という重傷を負ってしまったのです。
実はこのレースは決勝戦であり、吉川選手にとっては初優勝がかかったレースだったのですが、着外になるどころか棄権せざるを得ないという非常に悔しい結果となりました。
今後も死亡事故が発生しない…とは限らない
女子競輪においてはこれまで開設したように長期休養を余儀なくされる事故は発生しているものの、幸いなことに死亡事故は発生していません。
しかしながらこれはたまたま死亡事故が発生していないだけで、今後未来永劫死亡事故が発生しないという保障はどこにもありません。
競輪の危険性については先に解説したとおりですが、競輪の危険性は白熱のレースを生み出す要素でもあるので、危険性をすべて排除してしまうと競輪のレースはまったく面白味のないものとなってしまうでしょう。
競輪という競技の性質上常に事故が発生する危険は伴いますし、転倒の際の打ちどころが悪ければ死亡事故となってしまう可能性も十分あるのです。
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まとめ
ガールズケイリンは今では競輪界には欠かせないほどの人気を博しています。
男性選手に負けない白熱した争いが日々繰り広げられていて、観ていると非常にスリリングですが、その代償として競輪はいくつかの危険性をはらんだ競技であることは女子選手同士の争いであっても変わりありません。
今のところ女子競輪において死亡事故は発生していませんが、頭部を強打して脳挫傷を起こしてしまうような事故や、背骨を骨折するような事故が過去に発生しています。
これらの事故はたまたま死亡事故にならなかったというだけであり、打ち所が悪かったり処置が少しでも遅ければ死亡事故になってしまっていた可能性は十分あります。
競輪という競技が続けられる限り事故の危険は常につきまといますが、悲しい死亡事故が今後も発生しないことを祈るばかりです。